本研究は、真正細菌の16S rRNAにおいて普遍的に見られる7-メチルグアノシン(m^7G)修飾の生理的意義の解明を目的としている。主な研究材料としては大腸菌および放線菌を使用し、当該年度においては以下の研究を実施した。 1.大腸菌を用い、m^7G修飾欠損変異合わさると致死(あるいは著しい生育阻害)の性質を示す変異、いわゆる「合成致死変異」の探索を試みた。具体的には、染色体上のm^7G修飾酵素遺伝子(rsmG)を欠失させた株にインタクトなrsmG遺伝子を持つプラスミドを持たせて遺伝子機能を相補させておき、そこにトラスポゾンによりランダムな変異を導入した。得られたトランスポゾンライブラリーの中から、プラスミドを失う事が出来ない株をスクリーニング(プラスミド上にコードされているβ-ガラクトシダーゼ活性を指標)した。これまでに約10万株を調べたが目的の変異は見つかっていない。次年度も継続してスクリーニングを行う。 2.rsmG変異による微生物機能の活性化について、放線菌Streptomyces avermitilisを材料として検討した。本株のゲノム情報は全て明らかにされており、数多くの二次代謝遺伝子クラスター(少なくとも30クラスター)の存在が報告されている。本菌からrsmG変異株を分離して二次代謝化合物の生産性について調べた。これまでに調べた放線菌(Streptomyces coelicolor等)とは異なり、S.avermitilisの二次代謝はrsmG変異により活性化されなかった。今後、この差違を決定する要因ついて検討する必要がある。
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