研究概要 |
植物油などを基質としたとき、天然油脂中には希少な不飽和脂肪酸および希少な不飽和脂肪族アルコールをワックス(脂肪酸と脂肪族アルコールのモノエステル体)として菌体内に蓄積する微生物を開発した。この微生物が生産するワックスは、原料油を構成する脂肪酸よりも鎖長が偶数個短くなった不飽和脂肪酸および不飽和脂肪族アルコールを含んでおり、これらの物質は化学法による合成が困難(特に不飽和脂肪族アルコールは困難)であることから、本微生物は、植物油を希少不飽和脂肪酸および希少不飽和脂肪族アルコールへ変換する微生物変換法として有用である。 本年度は、紅花油および亜麻仁油から生産されたワックスを構成する不飽和脂肪酸および不飽和脂肪族アルコールの組成および構造を調べた。その結果、7,10-C16:2、5,8-C14:2、7,10,13-C16:3の不飽和脂肪酸がそれぞれ34.3、15.6、12.3wt%含まれていた。一方、ワックスを構成する脂肪族アルコール画分中には、9,12-C18:2、7,10-C16:2、9,12,15-C18:3、7,10,13-C16:3の不飽和脂肪族アルコールがそれぞれ45.4、30.2、30,0、13.2wt%含まれていた。 一方、上記物質の利用用途を調べた。一般に、リノール酸(C18:2)やリノレン酸(C18:3)などの不飽和脂肪酸は黄色ブドウ球菌などに対して抗菌活性を示す。しかし、リノール酸(C18:2)の分子内カルボキシル基が還元されてヒドロキシル基に変換された9,12-C18:2の不飽和脂肪族アルコールの抗菌活性を調べたが、有意な抗菌活性は認められなかった。今後は、本研究で生成した鎖長が短くなった不飽和脂肪酸、および不飽和脂肪族アルコールの修飾物質の抗菌活性を調べていく予定である。
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