FOXO1の標的遺伝子の候補として、筋萎縮時にFOXO1と同様の遺伝子発現パターンを示すリソソームタンパク分解酵素カテプシンL遺伝子に着目した。絶食により誘導されるカテプシンLの遺伝子発現は、骨格筋特異的に優勢阻害型FOXO1を発現させたマウスおよび骨格筋特異的FOXO1遺伝子欠損マウスにおいて減弱していた。さらに、マウスおよびヒトカテプシンLいずれのプロモーターにおいてもFOXO1結合領域が存在し、FOXO1によって活性化されることが判明した。カテプシンLはエンドサイトーシスやオートファジーによって、リソソームに運ばれたタンパク質の分解を担う重要な酵素であると考えられている。FOXO1/カテプシンL経路は、絶食によって骨格筋で誘導される代謝変化や萎縮に重要な役割を担っていることが示唆される。一方、RXRγマウスとKKA^y(A^y/+)マウスを交配することによりA^y/+;RXRγ/+マウスを作製し、14週齢より高脂肪食を9週間負荷した。A^y/+;RXRγ/+マウスは対照マウスであるA^y/+;+/+マウスと比較して体重に有意な差は認められなかったが、大幅な耐糖能の改善とインスリン感受性の亢進が認められた。又、A^y/+;RXRγ/+マウスではA^y/+;+/+マウスと比較して肝重量や肝臓中のトリグリセライド量が著しく減少し、さらに、顕著なインスリン感受性の亢進が認められた。以上の結果からA^y/+;RXRγ/+マウスでは肥満誘導により増加したエネルギーを、骨格筋でグリコーゲンとして貯蔵することにより全身の糖代謝を改善している可能性が示唆され、肥満による糖代謝悪化に対する骨格筋のRXRγ発現増加の重要性が示唆された。RXRγとヘテロダイマーを形成する核内受容体の探索など、さらに解析を進める。
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