研究概要 |
Glycerophosphodiester phosphodiesterase(GDE)に保存されている酵素活性領域のアミノ酸配列を指標として,ゲノムデータベースに対して新たなGDE遺伝子の探索を行った結果,研究代表者が同定した新規GDE遺伝子について,発現組織における生理機能の解明,また病態発症時における役割の解明を目標として研究を行った. 1)マウス筋芽細胞株C2C12細胞を用いて,RNAi法によりGDE5をノックダウンさせた際に筋分化に関わる転写因子myogeninの発現誘導が引き起こされ,筋管形成が著しく促進した.また,C2C12細胞,およびラット筋芽細胞株L6細胞を用いて過剰発現細胞株を樹立した結果,GDE5の恒常的な発現により、筋細胞分化は著しく抑制された.さらに,GDE5はglycerophosphocholineを特異的に分解する酵素であり,phosphatidylcholineの代謝系に関与することが強く示唆されるとともに,筋細胞分化を負に制御する酵素タンパク質であることが明らかとなった. 2)2回膜貫通型のGDEであるGDE1,およびGDE4遺伝子について,in situ hybridization法によって,マウス消化管における発現細胞の同定などの解析を行った結果,両遺伝子由来のmRNAは腸管上皮細胞層に発現することが明らかとなった.さらに,GDE1,およびGDE4の酵素活性を検討したところ,GDE1のみglycerophosphoinositol(GroPlns)を特異的にに分解したことから,消化管上皮細胞におけるGroPlns濃度を調節する酵素としてGDE1に着目した。そこで,同細胞層における細胞内GroPlnsの枯渇を目指し,消化管上皮細胞特異的GDE1過剰発現マウスの作製に着手した.現在,トランスジェニックマウスの樹立(2系統)まで至っており、繁殖により個体数を増やすとともに,同細胞層におけるGDE1タンパク質の過剰発現などの解析を行っている.
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