研究概要 |
平成21年度の本研究においては、生体内に存在する翻訳後N-ミリストイル化を生ずるタンパク質を網羅的に同定しそのアポトーシスにおける機能を検討することを目的とし以下の実験を行った。 [1] カスパーゼ基質のデータベースであるCasbaseに登録された約300のカスパーゼ基質の中からカスパーゼ切断後、Glyで始まるN-ミリストイル化コンセンサスモチーフを持つタンパク質を見い出す。 [2] NCBIデータベースより得たヒトの全タンパク質の配列データを対象として、カスパーゼ切断部位(DXXD等)の直後にN-ミリストイル化コンセンサスモチーフ(GXXXSX等)が存在する配列を計算機により検索し、カスパーゼ切断後に翻訳後N-ミリストイル化を生じ得る候補タンパク質を見い出す。 その結果、[1],[2]のいずれからも多数の候補タンパク質を見いだした。これらの候補タンパク質について、全長cDNAを入手し、切断断片のN-ミリストイル化について無細胞タンパク質合成系、あるいは遺伝子導入COS-1細胞における代謝標識実験により検討した結果、CDC6やKeap-1といったアポトーシス、あるいはストレス応答に関連した細胞情報伝達の制御機構において重要な役割を演じる生理活性タンパク質のカスパーゼ切断断片がN-ミリストイル化され得ることを見いだした。現在、これらのタンパク質のアポトーシス過程における翻訳後N-ミリストイル化とその生理的意義について検討を行っている。
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