薬用植物「甘草」カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)は漢方薬原料として需要が高く、漢方処方の70%以上に配合されている。肝機能障害治療薬として利用されるほか抗炎症、抗腫瘍、抗ウイルスなどの薬理作用が知られている。主薬用成分はトリテルペノイドサポニンのグリチルリチンである。本研究の目的はカンゾウのグリチルリチン等のトリテルペノイド化合物の生合成酵素遺伝子の発現を制御することによって医薬トリテルペノイド含有量を増加させ、医薬品原料としてのカンゾウの品質と生産性を向上させることである。さらにトツテルペノイドの生合成機構を遺伝子レベルで解明しようとするものである。本研究では、1)11-oxo-β-amyrinの30位の酸化反応を触媒し、グリチルレチン酸(グリチルリチンの非糖部)を生成する新規P450をG. uralensisから新たに単離し、GATEWAYエントリークローンを作成した。2)bASおよびCYP88D6遺伝子の発現制御機構を詳細に解析するために、これらの遺伝子について翻訳開始点から約1.8~1.9kbの5'上流領域(プロモーター)をPCR-based DNA Walking法により単離した。GUSレポーター遺伝子を用いた解析により、単離したプロモーター断片がbASおよびCYP88D6遺伝子の根特異的な発現に必要なシス配列を含むことを確認した。3)外来遺伝子(緑色蛍光タンパク遺伝子、GFR遺伝子)を導入した毛状根培養細胞を効果的に増殖する培養条件を明らかにした。4)植物個体間の大規模成分分析スクリーニングによりグリチルリチンを高含量に含む個体を見出した。
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