研究概要 |
本研究は、放線菌の産生する異常プリオン分解酵素(NAPase,E77)の作用機序の解明および新規酵素の探索について研究を行い、以下の2つの成果を得た。 1.作用機序の解明 大腸菌を宿主とした活性型異常プリオン分解酵素(NAPase)遺伝子の発現系および、リフォールディングによる活性型酵素の取得系を確立し、部位特異的変異法による変異型酵素の特性について検討を行った。 先に検討した、ケミカルモディフィケーションによる特異性の変化検討において、NAPaseのArg残基が異常プリオン分解能に関与する事、放線菌を宿主とした変異型NAPaseの特異性解析により、117および133Argがその中心領域である事を見出し、両アミノ酸残基をAla,Lys,Aspに置換した変異体を作製し、異常プリオンモデルであるPSP(過塩素酸可溶性タンパク質)および難分解性のケラチンタンパク質の分解能を測定した。その結果、同じ負電荷を持つLysや正電荷を持つAsp、さらには電荷を持たないAla置換体では、特異性が低下したため、両Argが特異性の発現に関与することを明らかにした。 更に、ランダム変異法を用いて様々な部位の改変を行い、異常プリオンに対する特異性の向上した変異体のスクリーニングを試みたが、特異性向上変異株の選抜系の確立が出来ず、有望変異株の取得には至らなかった。 2.新規酵素の探索 難分解性タンパク質分解能が優れるとして、新規に探索したプロテアーゼの特性を詳細に検討した結果、異常プリオンモデルであるPSPおよび難分解性のケラチンタンパク質の分解能が、先に我々が取得した酵素(NAPase,E77)と比較し、特異性が劣ることが明らかとなったため、研究を中断した。
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