研究概要 |
Trichoderma reesei粗酵素中にラクトース(Lac)やN-アセチルラクトサミン(LacNAc)二糖単位をOH基を有する化合物へ転移・縮合する活性が存在する。申請者らは縮合活性の本体をエンド型セルラーゼEGIと同定、大腸菌で発現したT.reesei EG I触媒ドメイン(rEG I CD)をプラットフォームにしてラクトースの縮合率の改善を検討している。本年度の研究目的は、昨年度からの継続で、1)変異ライブラリの構築と二糖遊離活性を指標とした変異株のスクリーニング(酵素の産生量や比活性の高い変異株の獲得)、2)変異酵素の基質特異性の検討、である。成果は以下の通り。 1)Error-prone PCRとMEGAWHOP PCRを利用して変異導入プラスミドライブラリを作製し、形質転換体を作製した。一時スクリーニングとして、OBR-HEC(Ostazin Brilliant Red)を基質としたハローアッセイによるセルラーゼ活性の検出、二次スクリーニングとしてLacβ-pNP、LacNAcβ-pNPの加水分解活性を検出した。スクリーニングでは分解活性が高いコロニーは得られなかった。1次スクリーニングでハローが検出されなかったコロニーは二糖遊離活性も低かった。スクリーニングは平成22年度も継続する。 2)有用な変異酵素が得られなかったので、組換え大腸菌親株を15℃で培養し集菌、溶菌後の酸沈殿上清をDEAEカラムにかけることによりrEG I CDをSDS-PAGEで単一バンドに精製し、基質特異性を検討した。同様にAsperigillus oryzaeで発現したrEG Iの基質特異性も比較検討した。rEG I CDおよびrEG Iの加水分解におけるグリコン特異性は、LacNAcβ-pNPに対する相対活性を100%とすると、Lacβ-pNPとCellobioseβ-pNPは50~80%%で、Chitobioseβ-pNP、Lacto-N-bioseβ-pNP、Glcβ-pNP、GlcNAcβ-pNP、Xylβ-pNP、Galβ-pNPはほとんど分解されず、可溶性の人工基質に対する特異性は両者でよく似ていた。縮合反応におけるグリコン特異性として、rEG ICDはLacNAcと1,6-hexanediolの縮合活性を有していることを明らかにした。しかし、その縮合活性はLacの場合の1/50程度であった(rEG I CDによるLac縮合率は30~40%、T.reesei粗酵素は5%)。縮合のアグリコン特異性に関しては、rEG I CDのLacと1-アルカノールとの縮合反応でオクタノールまで生成物が確認できた。オリゴエチレングリコールとの縮合反応においては複数の精製物がTLC上で見られ、LC-MSによる分析で、想定される生成物の分子量が検出された。
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