研究概要 |
担子菌ケロウジの成分であるsarcodoninr類は炎症抑制作用や抗がん作用など種々の生理活性を示す興味深い化合物である。このsarcodonin類の炎症抑制活性は市販の抗炎症剤であるindomethacinと比べても強力であるが,少しの構造変化で活性の強さは大きく変化する。 (1) Sarcodonin Jの不斉合成研究 Sarcodonin JはSarcodonin類の中では比較的合成が容易な化合物であり,効率的な合成経路の確立は種々のsarcodonin類のモデルとなりうる。まず(-)-Wieland-Miescher ketoneよりkinetic enolate trappingなどを駆使して合成を進め,シクロペンテノン部分のアルキル化には有機亜鉛化合物を用いた根岸クロスカップリング反応や有機スズを用いたStille反応が効果的であった。今後は環拡大反応を行いSarcodonin Jの骨格を形成する予定である。 (2) Sarcodonin類の14位の水酸基が活性に及ぼす影響 14-deoxy-sarcodonin Aの合成を目的として誘導体化を試みた。その結果14位水酸基をメシル化後,ヒドリド試薬と反応させたところ,シクロプロパン環構造を持つ誘導体を得た。さらに14位の水酸基をメシル化後,塩基性条件でMs基を脱離させることにより13,14-anhydro誘導体を得た14-deoxy誘導体13,14-anhydro誘導体の630μmol塗付での炎症抑制活性はきわめて弱かった。14-deoxy-sarcodonin Aは得られなかったが,以上の結果はsarcodonin Aの14位水酸基が活性発現に重要であることを強く支持する結果が得られた。
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