研究概要 |
本研究では寿命を制御するインスリン様シグナルの「入力機構」の全容解明に迫ることを目的として,寿命を制御するインスリン様分子の延命誘導物質による発現制御を解析する。平成21年度では,成虫寿命を制御する新たなインスリン様分子を同定し,遺伝子破壊の影響,遺伝子発現パターンの解析等を行った。 RNA干渉(遺伝子機能抑制)を用い,延命誘導物による延命を抑制する分子としてINS-12を同定した。その際,持続的にRNA干渉を実施できる摂食法を用いた。本ペプチドは既に同定済みのINS-18と同様にType-γに属し,哺乳動物のインスリン族ペプチドと同様のジスルフィド結合様式を有する。TMP/UV法を用いて作出した遺伝子破壊線虫を用いた解析により,INS-12はアンタゴニストとして機能しINS-18と共に延命に寄与する分子であることを明らかにした。さらに,INS-12はINS-18と同様に幼虫休眠にも寄与することを明らかにした。極めて奇妙なことに,INS-12ならびにINS-18は幼虫休眠において相乗効果を示すが,寿命延長においては相乗効果を示さなかった。また,リアルタイムPCR法を用いた解析から,休眠誘導物質によりins-12の転写が促進されることを明らかにした。さらに,ins-12はインスリン様シグナルの下流に位置する転写因子DAF-16による転写制御を受けることが判明した。以上のことから,ins-12はins-18と同様にフィードバック機構により転写が制御されると考えられる。
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