dodecanolは出芽酵母に対していったん殺真菌作用を示すが、時間経過と共に再び生きている細胞数が再び増加する。この現象を真菌の多剤耐性に寄与する薬剤排出ポンプ、ABCトランスポーターの亢進によるものと想定した。本研究では、植物由来のphenylpropanoidの一種trans-anetholeとdodecanolを組み合わせた場合に発揮される相乗的抗真菌作用の発現メカニズムを、ABCトランスポーターに焦点を絞って解析した。その結果、dodecanol処理によって、ABCトランスポーターに属するPDR5の遺伝子発現量増大が見られたが、trans-anetholeとの併用によりその発現はコントロールレベルにまで抑制された。PDR5欠損株においてはdodecanol耐性が増大していることから、trans-anetholeはPDR5の遺伝子発現を抑制することによって薬剤耐性を無効化していることが実証された。加えてtrans-anetholeは、実際に臨床使用されているアゾール系抗真菌性抗生物質であるfluconazoleと併用することで、重篤な深在性真菌症を引き起こす原因真菌の一つであるCandida albicansに対しても相乗的抗真菌作用を示すことが実証された。さらにC. albicansにおいて構造活性相関を行った結果、少なくとも、p-propylanisole、 eugenolにおいても相乗効果が認められた。
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