研究課題
枯草菌エポキシドヒドロラーゼは、ラセミ体1-ベンジルオキシメチル-1-メチルオキシランを基質として、鏡像選択的に加水分解する酵素である。有用物質合成への応用を指向し、広汎な基質を設計して、反応性および鏡像選択性を検討した。具体的には、上記化合物の1-位メチル基を異なった位置に移動したもの、削除したもの、メチル基をヒドロキシメチル基、メトキシカルボニル基、ホルミル基などに変換した物質を合成、基質とした上で、酵素反応を検討した。まず、fast isomer(反応がより速い鏡像異性体)では、付け根のメチル基を欠き立体障害を減らすと、より酵素に対する親和性が上がると推定したにもかかわらず、かえって反応性が低くなった。この反応は酵素内で、アスパラギン酸由来のカルボキシラートイオンがエポキシド末端に求核攻撃するところから反応が始まると考えられている。第三級エポキシドのメチル基の立体障害が消失した基質では、活性中心内で回転の自由度が大きく、この回転によりfast isomerである(S)-体が、反応点が遠ざかるため反応性低下が低下、一方slow isomerである(R)-体への求核攻撃は容易になり、上記2つの要因があわさって結果的に選択性が低下したと結論した。第三級エポキシドの構造を残したままで、メチル基を冒頭に述べたような極性官能基に変換した基質でも、やはり反応速度の低下がみられた。しかし、ビニル基やアルキニル基では良好な選択性をもって反応が進行、得られた化合物は再結晶により純粋な鏡像体を得ることができた。トリス(ヒドロキシメチル)メタノールを非対称に保護したキラルシントンの前駆体として有用である。
すべて 2009
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Journal of Molecular Catalysis, B : Enzymatic 59
ページ: 197-200
Tetrahedron : Asymmetry 20
ページ: 2105-2111