研究概要 |
フルオラスとは,フッ素原子の特性を利用したケミストリーに用いられる言葉で「含フッ素化合物」と「フッ素を含まない化合物」との分子間相互作用に基づくケミストリーにおいて頻繁に使用されるキーワードである。フルオラスタグを有機分子に組み込むと,その分子は有機化合物や水と混ざりにくくなるが,フルオラス分子同士は親和性が高くなる。この性質を利用するとフルオラス分子を反応混合系から簡便に単離でき,さらにフルオラスタグのフッ素含量が異なる場合は,フッ素含量を反映してフルオラス分子同士さえも容易に分離することが可能になる。我々はこのフルオラス性を利用した有機反応プロセスの簡略化を目的として「生理活性ペプチドの液相コンビナトリアル合成」に関して研究を展開し,今年度は以下の成果を得た。 1.フルオラスエンコード法によるペプチドの液相コンビナトリアル合成では,フッ素含量の異なるフルオラスアミノ酸保護試薬(f-FMOC試薬)が必要になる。昨年度までにこのf-FMOC試薬の合成ルートは確立できたので,今年度はf-FMOC試薬の大量合成を行った。その結果,C_3F_7タグ,C_4F_9タグ及びC_6F_<13>タグを有するFMOC試薬をそれぞれ必要量確保することができた。 2.各種アミノ酸のf-FMOC保護体の脱保護過程で副生するジベンゾフルベン体は、ハイドロボレーション及びアルカリ過酸化水素処理によりanti-マルコフニコフ型水和物を与え,f-FMOC試薬の原料としてリサイクルできることを明らかにした。
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