研究概要 |
フッ素含量の異なるフルオラスタグを,それぞれ異なるアミノ酸分子中に組み込み,分子標識化能と効率的分離能をアミノ酸分子に獲得させることで,エンコード化された生理活性ペプチドの液相コンビナトリアル合成が可能になるものと考え研究を遂行した。その結果,原料合成検討過程やフルオラスタグ化反応検討過程において以下の成果を得た。 1. アミノ酸N末端のフルオラスタグ化試薬であるフルオラスFMOC試薬の大量合成ルートの最適化を詳細に検討した結果,再現性の高い極めて効率的なフルオラスFMOC試薬の合成ルートを確立することができた。 2. フルオラスタグ化反応検討の二次的成果として,ラジカル種経由によるsp2炭素上への新規炭素-炭素結合形成反応を見いだした。本反応での特筆すべき点は,フェノール類の水酸基を保護することなく,かつフェノール類の芳香環炭素上に位置選択的に炭素-炭素結合を形成することができる点である。今後,scope & limitationを精査することにより一般性を調べるとともに,様々な化合物合成過程において本反応の応用を試みる。 3. 環境調和型フルオラスメタセシス触媒の開発に成功した。本フルオラス触媒は,現在市販されているGrubbs-Hoveyda 2nd generation触媒よりも触媒活性が高いだけでなく,簡単に何度もリサイクル使用が可能である。メタセシス反応は炭素-炭素結合形成反応の極めて有用なツールの一つであり,今後合成化学分野での汎用を期待したい。
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