申請書の研究実施計画に従い「イネ着生フザリウム属糸状菌のマイコトキシン産生関連クラスターの探索と同定」ならびに「イネ着生フザリウム属糸状菌におけるマイコトキシン産生性の解明」のための実験を行った。 「イネ着生フザリウム属糸状菌のマイコトキシン産生関連クラスターの探索と同定」において昨年度見出した新規マイコトキシン生合成関連遺伝子の候補遺伝子について、ポリケタイド合成酵素全長と思われるクローンの取得に成功し、異種糸状菌(Aspergillus oryzae)発現系での機能発現を試みた結果、空のベクター(コントロール)には無い化合物の産生が認められた。新規の構造を持った糸状菌由来二次代謝産物である可能性が高く、現在各種機器分析により構造情報の取得を目指している。 また「イネ着生フザリウム属糸状菌におけるマイコトキシン産生性の解明」については、これまでに入手したイネ着生フザリウム属糸状菌(麦類赤カビ病菌Fusarium graminearum、トウモロコシ赤カビ病菌F.verticillioides、イネ馬鹿苗病菌F.fujikuroi等)の各菌株を培養後、各種機器分析によりそれらのマイコトキシン産生性を精査した結果、これまでフモニシン産生の報告が無い菌においてフモニシンの産生を見出した。各種穀物(コメ、コムギ、トウモロコシ)培地でのフモニシン産生能を比較した結果、一般的にはトウモロコシ培地が最適であることが示された。フモニシンは、トウモロコシ中の汚染が顕著である事実と関連しており植物と糸状菌の生理的相互作用の面から興味深い。さらにコメにおいては、長粒種(タイ米など)と短粒種(ジャポニカ米)で産生条件等に違いが見出された。これらの成果は論文化し受理された(2件)。
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