申請書の本年度の研究実施計画に従い、「イネ着生フザリウム属糸状菌におけるマイコトキシン産生性の解明」のための実験を行った。 これまでに調査したイネ着生フザリウム属糸状菌のうち、国内外でイネから単離はされているがイネ植物体上で病原性を示す報告が無いFusarium proliferatumに焦点を絞り、新たに菌株の調査と入手の手続きを取り、1)主要マイコトキシンであるフモニシン産生能の調査、ならびに2)F.proliferatumのイネでの生理作用の解析を行った。2}については、本年度、ジーンバンクの研究スタッフの協力を得て、由来が明らかに国産であるF.proliferatum 3株を用いて登熟過程のイネ植物体へ人工的に接種・感染させる実験を実施した。 その結果、1)において、日本各地域ならびに海外のイネ圃場由来のF.proliferatum 7株のうち6株でフモニシン産生能が認められた。また2)では、人工接種実験検体において、感染部位の生理的変化ならびにフモニシン蓄積を調査した結果、感染部位での変色ならびにフモニシン蓄積を観察することができた。F.proliferatumはトウモロコシの病原菌であり、イネで生理的変化を起こすという知見はこれまでになく、またLC-MS/MSを用いた高感度な分析系によるin vivoのイネ植物体でのフモニシン蓄積の検出も初めての知見である。昨年までに報告した研究成果も含めて国際マイコトキシン学会(ISM主催、マレーシア)に応募したところ、口頭発表演題に選抜された。現在、今回イネ植物体上で見られた生理的変化がイネの過敏感反応によるものではないことを検証中であり、近く論文化を行う。
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