研究概要 |
NMRを利用したケトン、カルボン酸、エステル、アミドなどのカルボニル炭素を含む化合物の新しいカルボニル炭素近傍の立体配座解析法、およびケトンやエステル結合を介した部分構造間の相対立体配置決定法を開発することを目的とし、幾つかのモデル化合物に関してカルボニル炭素近傍の^2J_<H,H>、^2J_<C,H>および^3J_<C,H>を詳細に解析した。カルボニル炭素のβ位に水酸基の有る鎖状化合物では、測定溶媒を重メタノールなどの極性溶媒にすることにより分子内の水素結合の寄与が減少し、配座が固定されないため^2J_<H,H>結合定数は存在する複数の配座の影響を受けることが示唆された。カルボニル炭素のα位またはβ位に置換基の有る化合物に関して、カルボニル炭素の^<13>C-NMR化学シフト値およびスピン結合定数に与える置換基効果などについて、環のサイズを変更するなど幾つか系統的に解析した。数種の鎖状あるいは10員環などの環状ケトン化合物も化学合成し、各スピン結合定数を解析した。グリシン残基を含むペプチドに関してはメチレンプロトンとカルボニル酸素およびアミド窒素に対する立体配座と^2J_<H,H>結合定数の関係について報告があるが、ケトンやエステル化合物との関係を比較検討した。測定したカルボニル化合物の^<13>C-NMRデータは、化学シフト値を利用したカルボニル炭素を含む化合物の立体化学の解析に向けて、^<13>C-NMR化学シフト精密予測コンピュータシステムCAST/CNMRのデータベースに登録し,幾つかの化合物に関して評価した。CAST/CNMRを利用した構造訂正研究においては、化学合成と^<13>C-NMRシフト値の比較により、p-テルフェニル系の天然物であるテレファンチンGの構造をエステル置換基の位置がパラ位ではなくオルト位の構造と訂正し、さらに幾つかの関連化合物の構造も同様に訂正した。
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