研究概要 |
NMRを利用したケトン、カルボン酸、エステル、アミド、ラクトンなどのカルボニル炭素を含む化合物の新しいカルボニル炭素近傍の立体配座解析法、およびケトンやエステル結合を介した部分構造間の相対立体配置決定法を開発することを目的とし、幾つかの化合物に関してカルボニル炭素近傍の^2J_<H,H>を中心に^2J_<C,H>および^3J_<C,H>を解析した。アルデヒドの例として、構造決定したローデシアマメゾウムシの性フェロモンである2,3-ジヒドロホモファルネサールおよび(E)-6-エチル-2,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエナールの合成化合物を用いてNMR解析をした結果、アルデヒドでは、配座が固定されていないと考えられた。エステルの例としては、形式的全合成を行った14員環マクロライドであるアスペルジライドAの合成中間体などに関してエステルカルボニルの隣のメチレンの^2J_<H,H>とγ位にある水酸基の立体化学との関係を解析した。環状ケトンの例としては、10員環にケトンおよびエーテル結合を有するフォモプシンBを合成し、立体配座との関係を解析した。NOEの解析から立体配座は複数存在し、ケトンの隣のメチレンの^2J_<H,H>は配座の影響を受けていると予想されたが、スピン結合定数のみから配座を特定するのは困難であった。このフォモプシンBに関しては、報告されている天然物と合成品のNMRデータが一致しないことから、構造に関して検討した結果^<13>C-NMRの化学シフトなどから環状エーテルではなく鎖状のアルコール構造であることを明らかにした。一般に鎖状化合物の場合には立体配座が固定されないため、立体配座に制限のある環状ケトンなどのカルボニル化合物の構造解析にカルボニル炭素の向きと隣接するメチレンのジェミナルスピン結合定数の情報を用いることは有効で有ると考えられた。
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