研究概要 |
北海道は馬鈴薯の生産地として日本国内でも生産量の大部分を占めており毎年100万トンもの馬鈴薯が北海道内で澱粉へと加工されている.このとき,イモから澱粉を取り除いた粕が発生し,その量は年間10万トンにもおよぶ.このような農産物加工副産物の中には家畜の飼料として有効利用されているものも少なくないが,大部分は廃棄処分されている.しかし澱粉粕には約80%の炭水化物が残存しており,難消化性物質(レジスタントスターチおよびタンパク質など)の存在も確認している. そこで本研究では馬鈴薯澱粉粕中に含まれる澱粉およびタンパク質の機能性について探求した.馬鈴薯澱粉粕および澱粉粕から抽出したタンパク質を酵素処理によりペプチドまで分解した試料を動物実験に供し,脂質代謝に及ぼす影響について検討した. その結果,本年度は馬鈴薯澱粉粕では難消化性炭水化物の影響で腸内発酵が促進し,短鎖脂肪酸の増加,盲腸内細菌である乳酸菌レベルを増加させることが明らかとなった.さらに馬鈴薯由来の高リン酸化澱粉ではミネラルの吸収を促進することが明らかとなった.また,澱粉粕から抽出・調製したペプチドでは,ガラクトサミン薬剤を投与して肝毒性を誘発させた場合,腸内発酵の促進によりその毒性を軽減させることが明らかとなった.以上の結果より,馬鈴薯澱粉粕には腸内環境改善効果および肝毒軽減効果を持つ難消化性澱粉およびペプチドが含まれており,食品として有効利用できる可能性が認められた.得られた成果についてはEuropean Journal of Lipid Science and Technology, Nutrition Researchに論文が掲載された.
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