研究概要 |
今日, 女性における乳癌の罹患率が非常に高くなっており, 現在では様々な治療法が存在し, 治療が行われている。しかしながら乳癌患者は増える一方であり, 乳癌に対し治療だけでなく, 予防を行う必要がある。乳癌患者ではアディポネクチンの産生量が減少するという報告など, アディポネクチンと乳癌が密接に関わっていることが示唆されている。一方、リンゴポリフェノールが抗腫瘍効果を示すこと, 脂肪の蓄積が抑制されること, 肥満患者ではアディポネクチン産生量が減少し, 乳癌細胞の増殖が促進することが報告されている。本研究では化学発癌モデル, および高脂肪食負荷によるDIO肥満モデルを作製し、リンゴポリフェノールの主成分であるリンゴプロシアニジン(ACT)の抗腫瘍効果に及ぼす高脂肪食負荷の影響を検討した。化学発癌癌モデルにおいてACT投与群で抗腫瘍効果が確認された。DIOマウスでは, 高脂肪食負荷開始6週よりACT投与群と蒸留水投与群で体重の差が観察され, 13週後の脂肪組織ではACT投与群で高脂肪食負荷によるアディポネクチン遺伝子発現量の低下が抑制された。DIOモデルマウスの遺伝子発現解析によって, 高脂肪食負荷によりアディポネクチンの遺伝子発現が有意に低下した。アディポネクチンは肥満になるとアディポネクチンの産生量が減少することが報告されており, 今回の結果と一致する。このアディポネクチンの低下はACTを投与することにより有意に回復した。さらに、化学発癌マウスの高脂肪食負荷モデルにおいてはACT投与群において、腫瘍の成長抑制並びに生残日数の延長が認められでいた。以上より、ACT投与に抗腫瘍作用においてアディポネクチンの産生調節が関与している可能性が示唆され、今後、肥満との直接的関連性やアディポネクチンの産生調節機構を解明することが、QOLの改善に重要であると思われる。
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