研究概要 |
マウスに7.12-dimethylbenz(a)anthracene(DMBA)を6週間胃内投与し、初回DMBA投与より1%リンゴプロシアニジン類(ACT)水溶液を飲料水として与え,対照群には蒸留水(D.W.)を与えた。DMBA投与による化学発癌モデルマウスを作成し,ACTの抗腫瘍効果を検討した。DMBA投与開始より23週でD.W.群において腫瘍が肉眼的に観察され,25週で両群に腫瘍形成が確認された。D.W.群の腫瘍に比べACT投与群の腫瘍は非常に小さく,ACT投与によるDMBAによる化学発癌に対し抗腫瘍効果が確認された。しかし、マウスより腫瘍を摘出し,HE染色を行い,病理組織学的解析を行ったところ,角質が上皮細胞の増殖により腫瘍の内部に取り込まれ粥状を示していたことから腫瘍は扁平上皮癌であると考えられ、本法は安定した乳癌モデルとしては適さないと思われる。 さらに、B16メラノーマ細胞移植腫瘍モデルにおいて、高脂肪食負荷により誘導した肥満マウスを用いてACTの抗腫瘍効果と肥満との関連を解析した。高脂肪食負荷-ACT投与群の腫瘍組織において、アディポネクチンレセプター1および2(Adipor1, Adipor2)の遺伝子発現が有意に低下した。Adipor2は肝臓で顕著な発現が認められるが、同マウスの肝臓におけるAdipor2の発現はACTの影響を受けていないことから、腫瘍細胞特異的なAdipor2の発現調節機構が存在し、ACT投与により発現が抑制されたと考えられる。ACT刺激によるAdipor1及びAdipor2の発現抑制はin vitroにおいても認められており、アディポネクチンの抗腫瘍機構を解明する上で、非常に興味深い知見である。
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