研究概要 |
本これまで我々は,アルツハイマー型認知症の原因蛋白質であるアミロイドβ蛋白質(Aβ1-42)及びアイスランド型脳症の原因蛋白質であるヒト型シスタチンCのL68Q変異体をモデル蛋白質として,種々の天然ポリフェノールに加え,酵素工学的に調製したリポフィル化及びグリコシル化フェノール化合物の抗アミロイド効果について調べ,より強い効果を持ったアミロイド線維形成抑制性フェノール化合物を分子デザインしようとする研究を行ってきた。昨年度の研究結果によって,(1)フェノール化合物の抗アミロイド線維形成効果には分子サイズが重要であること,(2)アミロイド線維の伸長抑制にはグリコシドの糖鎖長の寄与率が高いこと,また,(3)フェノール化合物の疎水性が重要であることを明らかにすることができた。また,これまでのAβ1-42及びヒト型シスタチンL68Q変異体を用いた実験に加えて,昨年度は,遺伝子組換えの技術によって調製したヒト型ステフィンA,ヒト型ステフィンB及びアポリポタンパク質A-II(ApoA-II)も標的蛋白質に加え,新規酵素合成フェノール化合物誘導体のアミロイド線維形成抑制能を調べた。その結果,フェノール化合物の抗アミロイド効果には一定の構造機能相関があることの確証を得るに至った(Kondo et al. : Enzymatic synthesis of anti-amyloidal phenolic compounds, 5th Pacific Rim Food Protein Symposium, Vancouver, BC, Canada, August 21-23, 2009)。また,昨年度は,天然のフェノール化合物である朝鮮ニンジン由来のジンセノサイド及び杏由来のカロテノイドの抗アミロイド効果についても調べ,これらにアミロイド線維形成抑制効果があることを明らかにした。
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