研究概要 |
昨年度に引き続き,種々の天然フェノール化合物及びそれらのリポフィル化及びグリコシル化誘導体のアミロイド線維形成抑制能を調べ,これまでの研究結果の総括を行った。 (1)天然フェノール化合物を用いた研究:アミロイド型タンパク質であるL68Qヒト型シスタチン,ヒト型ステフィンA及びヒト型ステフィンBは酵母発現系を用いて遺伝子工学的に調製した。アミロイドβ蛋白質及びアポリポタンパク質A-IIは市販のものを用いた。種々の天然フェノール化合物の抗アミロイド効果を調べた結果,杏の実験からは,抗アミロイド効果はルテイン>βカロテン>βクリプトキサンチンの順であること,ゴマの実験からは,セサミンを亜臨界処理して得られるモノ及びジカテコール体にするとその抗アミロイド効果が著しく上昇することが明らかにされた。また,老化促進モデルマウス(SAM)を用いた実験によって,杏抽出物にSAMの学習能低下を予防する効果があることが示された。 (2)フェノール化合物誘導体を用いた研究:リパーゼを用いてフェルラ酸,カフェ酸,桂皮酸,シナピン酸及びクロロゲン酸に長さの異なる脂肪アルコール鎖を付加したリポフィル化フェノール化合物を作成し,ルチナーゼを用いて種々のフェノール化合物にルチノースを付加したグリコシル化フェノール化合物を作成した。得られたフェノール化合物誘導体の抗アミロイド性を調べた結果,グリコシル化に比ベリポフィル化の方がより効果的であることが明らかにされた。リポフィル化は,総体的に長鎖長の方がより効果的であったが,シナピン酸に関しては最適疎水性の存在が示唆された。 (3)総括:天然フェノール化合物及びそれらのリポフィル化及びグリコシル化誘導体を調製し,アミロイド線維形成抑制能を調べた。その結果,フェノール化合物の抗アミロイド効果には,一定の構造-機能相関があること,特に両親媒性が重要であることが明らかにされた。
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