化学発がん剤処理時に変動する肥満関連因子の探索を行うことを目的とし、これまでに摂食ホルモンの1種であるレプチンが重要であるとの知見を得た。そこで今年度は、その産生を制御する食品因子を同定し、その大腸発がん予防作用を評価することを目的とした。まず、quercetin、luteolin、apigenin、flavone、chrysinおよびnobiletinの6種のフラボノイドについて、マウス前駆脂肪細胞3T3-L1のレプチン分泌に及ぼす影響をELISA法で解析した。3T3-L1細胞に分化誘導を行い、その後12日間フラボノイド(10μM)を添加したところ、nobiletinが最も強いレプチン分泌抑制作用を示した。そこで、体内への吸収効率を考慮し、nobiletinと同程度の分子疎水性を有するにも関わらず活性の低かったchrysinとnobiletinを大腸化学発がん試験に供した。20週後における発がん処理群の血中レプチン濃度は、無処理群に比べ有意に上昇していた。一方、大腸腺がん数の減少および発生率の低下が認められたnobiletin混餌投与群(100ppm)では、血中レプチン濃度も無処理群とほぼ同程度にまで低下していた。また、レプチンがヒト大腸がん細胞HT-29の増殖を有意に促進させたことから、血中の過剰なレプチンは、非肥満状態における大腸発がんのプロモーションあるいはプログレッション段階に関与しており、nobiletinはその上昇を抑制することで、腺がんの形成を抑制している可能性が示唆された。さらに、レプチン産生抑制機構を解析した結果、MEK1/2の活性化の抑制を介してeIF4Bのリン酸化を抑制することが重要であるとの知見を得た。以上から、本研究では、大腸発がんに関連する肥満因子としてレプチンを同定し、その産生を制御する食品因子としてnobiletinを見出すことができた。
|