研究概要 |
本年度は下記に示す(1)~(4)について研究を実施した。 (1) CvNTRC/CvPrxのタンパク質レベルでの機能解析 両組換えタンパク質を0-500mM NaCl含有緩衝液内で反応させ、ゲルろ過クロマトグラフィーによる複合体検出ならびに分子量測定を行った。その結果、両タンパク質が形成する複合体ピークは塩濃度により異なる保持時間で検出された。また、100mM NaCl存在下で過酸化物分解活性が最大となり、本抗酸化系が環境条件により複合体形成様式を変化させ,その活性を調節する機能を持つことが示唆された。 (2) CvNTRC, CvPrx遺伝子同時発現酵母の作製とストレス耐性試験 CvNTRC、CvPrx遺伝子を単独または共発現酵母を作製し、耐凍性、耐熱性、酸化ストレス耐性試験を行った。その結果、CvNTRCのみを発現、CvNTRCとCvPrxを同時発現する酵母において、全ストレスに対する耐性増加が認められた。さらに、酸化ストレス誘導剤であるメナジオン存在下で、両遺伝子の発現による超酸化物アニオンの蓄積抑制が観察された。本成果は、植物NTRCが関与する系の耐凍性への効果とin vivoにおける機能を初めて明らかにしたものである。 (3) 植物用2遺伝子同時発現ベクターの改変 pRI101-ANベクターを用い,CaMV 35SプロモーターからNOSターミネーターまでの領域をPCR増幅後制限酵素処理し、T-DNA領域に導入することで,2遺伝子を導入し,個別に発現できるベクターに改変した。 (4) CvNTRC, CvPrx導入植物発現用ベクターの構築と形質転換アグロバクテリウムの作製 CvNTRCおよびCvPrxの単独または両方を前項(3)で作製したベクターに組込み、植物発現コンストラクトを作製した。これらのコンストラクトをアグロバクテリウムに導入し,コロニーダイレクトPCRにより導入を確認した。シロイヌナズナの形質転換を行い,本抗酸化系の植物耐凍性獲得への関与ならびに機能を調べていく。
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