本年度は、(1)クロレラにおけるNTRC(CvNTRC)遺伝子の破壊、(2)CvNTRCおよびCvPRX遺伝子の高等植物への導入を行った。 (1)については、NTRC遺伝子の構造遺伝子上流域と下流域によってネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子を挟んだPCR産物を増幅作製し、クロレラの形質転換を試みた。本研究で用いたChlorella vulgaris C-27株の形質転換法は確立されていなかったため、他のクロレラ株の方法を基に改良を加え、抗生物質G418耐性を示すクロレラを得ることができた。それについてG418含有培地上での継体培養を繰り返し、生存し続けたクローンを対象としてPCRおよびゲノミックサザンプロッティングを行い、NPTII遺伝子の導入について確認した。CvNTRC遺伝子そのものが破壊された形質転換株は得られなかったが、クロレラC-27株の形質転換は初めて成功が確認された。本成果は、藻類を利用したバイオ産業等の研究への今後の応用を期待させるものとなった。 さらに(2)については、シロイヌナズナに導入するために、高等植物遺伝子導入ベクターpRI101を改変した、CvNTRCとCvPPX二つの遺伝子を単独あるいは同時に組み込んだコンストラクト5種類を作製した。さらにアグロバクテリウムに導入し、floral dip法により野生株と△ntrc株の二種類のシロイヌナズナの形質転換を行った。10種類の遺伝子組換えシロイヌナズナの作製を試みて、カナマイシン耐性を示すシロイヌナズナが多数得られ、これらのシロイヌナズナへの遺伝子導入について確認を行った。これにより、CvNTRCおよびCvPRX遺伝子導入による高等植物のストレス耐性付与への展開を期待される結果が得られた。
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