研究概要 |
平成22年度はin vitro培養脂肪細胞評価系により抗メタボリックシンドローム効果を有する機能性食品成分の作用点を明確にするための検討を行った。本研究課題の遂行に当たっては、脂肪細胞の機能研究に広く用いられているマウス前駆脂肪細胞3T3-L1を主に使用した。 詳細な脂肪細胞分化抑制効果を検討するにあたり、フローサイトメーターやBODIPY493/503染色によるIN Cell Analyzer 1000を用いた脂肪細胞分化度の定量的な評価法の確立を行った。その結果、3T3-L1前駆脂肪細胞の分化誘導初期において、発酵乳ケフィア由来水溶性画分は処理濃度依存的に細胞内脂肪蓄積量と脂肪滴数の減少が確認された。 発酵乳ケフィア由来水溶性画分は、脂肪細胞分化時に発現する転写因子C/EBPα,β,δ、PPARγの発現量を低下させることが確認された。細胞内cAMPレベル上昇処理は、濃度依存的に発酵乳ケフィア由来水溶性画分の脂肪細胞分化抑制効果を低下させたことより、脂肪細胞の分化誘導初期の細胞内cAMPレベル上昇阻害を介して、C/EBPβ,δの発現を抑制し、脂肪細胞分化抑制効果を示すと考えられた。また脂肪細胞分化抑制効果を有する発酵乳ケフィア由来水溶性画分中の活性成分は、分子量2,000以上の画分中に複数存在し、主要な活性成分は分子量5,000付近に存在することが示唆された。 3T3-L1脂肪細胞のアディポサイトカインの発現に及ぼす発酵乳ケフィア画分の影響を検討した結果、通常時と酸化ストレス負荷時の双方において、発酵乳ケフィア由来脂溶性画分、水溶性高分子画分、そして水溶性低分子画分の各々の処理区において、抗糖尿病効果などを有する善玉アディポサイトカインの発現量増加と、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病を誘発させる悪玉アディポサイトカインの発現量減少が確認された。
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