ヒトを初めとする霊長類は、ビタミンCであるアスコルビン酸(Asc)を体内で合成できない。よって、Ascを食物や薬剤などから摂取せねばならないが、副腎は体内でAsc濃度が最も高い臓器として知られる(約20mM)。壊血病の病因に端を発し骨形成・カテコールアミン生成への関与や抗酸化剤としてのAscの作用はよく知られているが、最大濃度を示すこの副腎に固有のAsc作用については副腎の髄質におけるカテコールアミン(ノルアドレナリンなど)生成系での電子供与体としての作用のみである。皮質は球状層、束状層、網状層の三層からなり、各々鉱質コルチコイド、糖質コルチコイド及び副腎性アンドロゲンを特異的に産生する。本研究は、ステロイドホルモンを産生する副腎皮質に固有なAscの作用を、副腎皮質の層別機能との関連という新しい視点から分子レベルで解明することを目的としている。 ラットはAscを体内で合成する。よって、遺伝的にAscを合成できない骨形成不能ラット(ODSラット)を用いて、in vivoでの生体内のアスコルビン酸(Asc)量とステロイドホルモン動態との関係を詳細に検討した。ODSラットの体内に留まるAsc量は、飲料水に添加するAsc量により自由に調整することが可能であった。血漿、副腎などでのAsc及び各種ステロイドホルモン量をHPLC又はRIA-assayにて、また、体内のAsc量と副腎皮質の層特異的なステロイド合成酵素(P450aldoおよびP45011β)の発現量との関係は免疫組織化学的、蛋白化学的に検討した結果、Ascは、副腎皮質球状層のアルドステロン合成に特異的に関与することが示唆された。次いで、球状層特異的に発現するP450aldo、束状層特異的に発現するP45011βを大腸菌に大量に発現させる目的で、発現ベクターの構築を試みた。種々の発現ベクターを試みた結果、pTrcHis2AにP450遺伝子を組み入れることに成功した。
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