研究概要 |
日本におけるピーナツの消費量の増加に伴ってピーナツアレルギー患者が増加している.かつて3大食物アレルゲンのひとつと言われた大豆より高頻度に患者が発症していることが報告されている.しかし日本国内でピーナツアレルギーに関する研究はほとんど行われていない.そこで研究では報告者らが開発したヒト抗体作製手法をピーナツアレルゲン解析に応用して得たオリゴクローナルIgM抗体を用い,アレルゲンによる免疫系刺激の初期段階でのピーナツアレルギー発症機構を解明することを目的とした. エプスタインーバールウィルスで形質転換し短期間の培養が可能になった多数のヒト末梢血リンパ球由来の細胞群(ライブラリー)から,ピーナツアレルゲンに対する抗体分泌細胞の検索を行った.得られた抗体のうち,ピーナツの主要アレルゲンタンパク質であるAra h1分子上のどのアミノ酸配列を認識するかを大まかに把握した. 形質転換ヒトリンパ球ライブラリーの抗体スクリーニングを行ったところ,31種の抗体分泌細胞が得られた.Ara h1のアミノ酸配列から合成した20アミノ酸長のオーバーラッピングペプチドとの反応性を解析した結果,抗体が結合する部位は大きく6つに分類することができた.このうちエリアCと名付けたアミノ酸配列171-230のエリアは,米国のピーナツアレルギー患者IgEを用いた結合試験では見いだされていない新規な抗体結合部位であることが明らかになった.
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