食品成分等の抗酸化活性を測定する方法には、DPPH法やESR法があるが、特殊な試薬や酵素あるいは高額な測定機器が必要であった。本研究は、電気化学手法を使って現場レベルで抗酸化活性測定を可能にする分析手法の開発である。 その測定原理は、電極(活性酸素発生極)に負の電圧を印加し表面上に活性酸素を発生させる。この活性酸素は、不安定で、付近化反応によって直ちに過般化水素に変換される。一方、その電極の近接する対向面(500μm)にこの過酸化水素を測定する電極(過酸化水素測定極)を配置し、正の電圧を印加する。ここに抗酸化性物質が存在すると活性酸素が補足され過酸化水素生成量が減少し、過酸化水素測定極の応答電流値が減少する。この減少量から抗酸化活性を測定する。 負の電圧を印加し活性酸素を発生させる活性酸素発生極では、過酸化水素も同時に発生しており、活性酸素発生量の定量化は難しい。21年度は、本測定システムの定量的解析の一環として、活性酸素の発生を明らかにするため、Cytochrome cの酸化還元反応を用いて電極上で発生する活性酸素について解析した。電極上に負の電圧を印加するとCytochrome cの550nmでの吸光度が増加し、還元型Cytochrome cの存在が認められた。この結果は、活性酸素が電極表面上で発生していることを示しており、本測定システムが有効に動作していることが明らかとなった。 一方、カテキン標準水溶液を用いて、本測定システムの解析・評価をする際、ロッド型市販電極では、抗酸化活性計測の前後で過酸化水素測定極の電極応答が僅かに低下していることが明らかとなった。詳細な解析の結果、電極上に正の電圧を印加することでカテキンが電極表面に吸着し、これにより過酸化水素の応答電流が低下していた。本測定システムは、最終的にスクリーン印刷電極を使用し、電極は使い捨て型となるため、吸着による応答電流低下は大きな問題とはならない。しかし、測定時にポリフェノール類が電極に吸着し、測定値に影響することは明らかであり、今後、過酸化水素測定極の電極表面を高分子膜等で被覆し、吸着による応答電流低下を防ぐ予定である。
|