既に、シイタケフレーバー成分である環状硫黄化合物のレンチオニンが、ex vivoにおいても血小板凝集抑制作用を有し、その作用部位がニンニクフレーバー成分のスルフィド類や薬剤のアスピリンとは異なることを示している。このことから、レンチオニンは、アスピリンジレンマのような問題を持たない新たな機能性成分としての利用が期待できるが、その独特のフレーバーが、食品への幅広い利用を制限している。そこで、本年度は、その利用用途を広げるための試みとして、レンチオニンのシクロデキストリンへの包接を行った。まず、レンチオニンとシクロデキストリンを混合後、遠心分離により包接物を沈殿させ、上清に残存しているフリーのシクロデキストリン量を測定した。全シクロデキストリン添加量から残存しているフリーのシクロデキストリン量を差し引くことにより、レンチオニンのシクロデキストリンへの包接割合を調べたところ、シクロデキストリン2分子に対し、レンチオニン1分子は包接されていた。次に、このレンチオニン-シクロデキストリン包接物をラットに経口胃内投与し、経時的に採血を行い、その血小板凝集割合を測定した。その結果、レンチオニン-シクロデキストリン包接物を投与した場合には、投与後4~8時間で血小板凝集を抑制した。一方、フリーのレンチオニンのみを経口胃内投与した場合には、投与後8~10時間で最も血小板凝集を抑制した。このことから、レンチオニンをシクロデキストリンに包接した方が、腸管からの吸収が早く、効果が発揮されやすいと考えられる。
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