国民健康・栄養調査や糖尿病実態調査からも明らかなように、わが国の肥満とこれに伴うメタボリックシンドロームの増加は深刻である。国民医療費の膨張を食い止め、活力ある高齢化社会を実現するためには、予防の視点からの食品による制御が不可欠である。本研究では肥満や2型糖尿病に関わる鍵分子であるAMPキナーゼ(AMPK)の活性化作用に関わる食品因子の検討と作用機構解明を行い、AMPKを介したメタボリックシンドローム予防を実現するための科学的基盤の確立を目的とする。 マウス筋管細胞をモデルとして種々の食品因子によるAMPKの活性化を検討した。その結果、数種の食品因子については、AMPKの活性化作用を有することを明らかにした。また肝細胞でも同様に検討したところ、必ずしも両方の細胞で活性化作用を示すのではなく、細胞ひいては臓器特異性があることが推測された。 AMPKの活性化作用を有する食品因子について、その活性化メカニズムについて検討を試みた。その結果、細胞内のエネルギーバランスの指標として考えられるAMPやATPの細胞内濃度と活性化作用との相関が認められないことから、AMPKの活性化作用は別の因子が関与していると考えられた。
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