研究概要 |
デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、微生物由来酵素は澱粉糖化や食品加工に使われる産業的に重要な酵素である。枝切り酵素は、基質特異性の違いによりイソアミラーゼ(ISA)とプルラナーゼ(PUL)に大別され、産業利用目的ではそれぞれ一長一短がある。そこで本研究では両酵素の構造・機能解析を進め、両酵素の長所を生かしたより利用価値の高い酵素を創製する事を目標としている。この観点から平成20年度に行った研究成果は以下の通りである。まず京都大学の三上、SPring-8サービスの勝矢らと共同で、産業的に最もよく利用されるBacillus由来PULについて酵素の立体構造解析を進めた。その結果、活性中心構造が基質特異性の異なるPseudomonas由来ISAとよく似ている事がわかった。この研究成果から、両酵素の構造を比較する事により同酵素の基質特異性を改変したり、より産業的に利用価値の高い酵素を設計したりする事が可能になると考えられる。実際に本研究でも得られた立体構造を参考にKlebsiella由来PULの基質特異性の改変を試みたところ、基質特異性は変化したものの酵素活性が大きく低下した変異酵素が得られた。この点は今後の検討が必要である。立体構造解析に関しては、現在澱粉糖化工程の現場で使用されているBacillus由来PULの立体構造解析を進めている。次に基質特異性とともに利用の現場で重要なファクターである熱安定性獲得機構について、立体構造情報をもとにCa、Mgなどの金属イオンの役割について明らかにした。本研究成果により、熱安定性発現に大きく関与する金属イオンの部位を特定することができ、より熱安定な酵素の設計に役立つかもしれない。さらに現在可動性ループ構造が関与するデンプン枝切り酵素のユニークな活性発現機構の解明を行っている。
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