研究概要 |
デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、デンプン糖化や食品加工に用いられる産業的に重要な酵素である。本研究では、工業的なデンプン糖化や食品加工に用いられるデンプン枝切り酵素の立体構造や基質特異性発現機構を明らかにし、新規有用酵素を創製することを目的としている。平成21年度にはこれまでに得られた研究成果に基づき、次のような研究を行った。Bacillus由来プルラナーゼについては、昨年に引き続き酵素-基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を行い、Klebsiella由来プルラナーゼと比較した。次にKlebsiella由来プルラナーゼについては、プルラナーゼと基質特異性が大きく異なるPseudomonas由来イソアミラーゼと基質アナログ複合体の立体構造を比較することにより、基質特異性発現機構の解明を試みた。最初にプルラナーゼのサブサイト中最も親和力が高いサブサイト-2の構造をイソアミラーゼと比較したところ、プルラナーゼの方が酵素-基質間の水素結合数が1本多い事がわかった。この水素結合数の違いが、両酵素の基質特異性の違いと関係するかどうか確かめるため、水素結合に関与するアミノ酸残基を置換した変異酵素を作成して解析したところ、サブサイト親和力に違いは見られたが、基質特異性とはあまり関係しないことがわかった。一方、サブサイト+2の構造の違いについても検討した。Klebsiella由来プルラナーゼでは、活性中心に基質が結合すると、Trp727の側鎖が回転して+2のサブサイトに結合するグルコース残基とスタッキング相互作用する。そこで本残基をAlaやPheに置換した変異酵素を作成して解析したところ、本残基を含むループの主鎖のコンホメーション変化が、活性発現には必須であることが示唆された。
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