研究概要 |
デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、デンプン糖化や食品加工に用いられる産業用酵素である。本研究では、このデンプン枝切り酵素の立体構造や基質特異性発現機構を明らかにし、新規有用酵素を創製することを目的としている。最終年度である今年度は、これまでに得られた研究成果に基づき次のような研究を行った。まずBacillus由来プルラナーゼについては、昨年に引き続き酵素-基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を行い、Klebsiella由来プルラナーゼと比較した。次に幻Klebsiella由来プルラナーゼについては、活性中心に位置しα-アミラーゼファミリーの保存領域3を含むフレキシブルループの構造と機能について検討した。アポおよび基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を比較した結果、本フレキシブルループは基質(アナログ)が存在する場合としない場合でそのコンホメーションを大きく変化させることがわかった。まず活性中心に基質(アナログ)が結合すると、フレキシブルループ上にあるTrp727がサブサイト+2のグルコース残基とスタッキング相互作用するように側鎖を約90°回転させ、これに伴いループ全体のコンホメーションが変化し、ループ上にある触媒残基Glu725が触媒位置へと約4.4AÅ移動して活性を発現すると推定される。一方同じデンプン枝切り酵素で、基質特異性が異なるイソアミラーゼではこの様にフレキシブルな構造が見られない事から、両酵素の保存領域3のアミノ酸配列を比較し、ループのフレキシビリティーを生み出すと推定されるGly724とGly726に変異を導入することにより、基質特異性が変化した変異酵素を作成することに成功した。
|