多くの木本植物は発芽定着の際に、根系において相性の良い共生菌と巡り会い菌根共生を確立できるか否かが重要な鍵となる。新たな生育地に定着の際に、植物定着が先に起こるのか、共生菌定着が先に起こっているのかは、植生の再生や維持機能を考える上で興味深い。本研究では、海岸砂丘でいまだに宿主樹木の定着がない場所において、どのような外生菌根菌が感染力を保って存在するのかを明らかにすること、また、その菌がどのように侵入しているのか明らかにすることを目的としている。平成20年度の北海道えりも岬海岸部での調査の結果、樹木の定着前からショウロを中心とする多くの共生菌が土壌中に存在すること、その周辺に散在する野生のシカの糞中にこれらの共生菌が存在することが示された。しかし、シカの糞中には土壌中に最も多く存在したショウロは多く見られなかった。そこで、21年度はシカの糞の調査を継続するとともに、ネズミに注目して研究を継続した。ネズミの調査は同調査地でトラップを仕掛けて捕獲した個体から糞を採取し、その糞の菌感染源の有無を調べて行った。その結果、春の採取ではネズミを捕獲できなかったが、秋の採取では捕獲と糞の採取に成功し、その糞中から30%を超える頻度で活性を持ったショウロの存在が確認出来た。また、シカの糞中からも低い頻度ではあるがショウロが検出された。以上から、樹木の共生菌の感染源運搬にシカとネズミの存在が関わっており、森林の拡大に貢献している可能性があることが示された。
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