研究実施計画に則し、森林路面の浸透能測定を行った。栃木県佐野市に位置する東京農工大学FM唐沢山内の林道を対象とし、調査は路面の土壌や植生状況の異なるプロットとして、車両往来のある林道(6箇所)、往来のない道路脇(2箇所)、設置後の経過年数が比較的新しい林道(1箇所)、設置後に利用されず放棄された林道(3箇所)、ヒノキ人工林の林内(2箇所)の計14箇所を選択した。各箇所に1×1mのプロットを設置し、振動ノズル式降雨実験装置を用いてプロット内に約240mm/hの雨量で散水した。土壌に浸透せずに地表流となった水を斜面下部において、30秒間隔で捕捉し測定し、地表流量から散水強度を引き浸透強度を求めた。浸透能の決定要因を検討するために、各プロットで土壌サンプルを採取し、飽和透水係数、密度、空隙率、粒径分布を計測した。また、現地で土壌硬度、植生被覆率、傾斜、道幅を計測した。 林道における浸透能は平均33.3mm/h(SD=8.8)と林内(平均563.1mm/h)や道路脇(平均154.2mm/h)に比べて低く、ばらつきも小さかった。新しい林道での浸透能は4.5mm/hと最も低い値であり、放棄された林道は平均で63.9mm/hと林道と比べると高い値であった。土壌硬度や土壌密度が小さく、空隙率が大きい路面ほど浸透能が高くなる傾向が見られた。浸透能と植生被覆、道幅や路面傾斜、飽和透水係数には有意な関係がみられなかった。林道路面は設置時や利用による踏圧の結果、土壌硬度や密度が高いことから、浸透能が低くばらつきも小さくなったと考えられた。また、放棄林道では植生侵入や有機物層の形成によって空隙量が増加し、林道の2倍程度浸透能が高くなったと考えられた。
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