森林路面での浸透能測定および林道区間からの水流出量の観測および解析を行った。林道、比較的新しい林道、15年ほど放棄されている林道、道路脇、ヒノキ人工林内の計14箇所を選び、1×1mのプロットを対象として散水した。各プロットで土壌サンプルを採取し、飽和透水係数、土壌密度、空隙率、土壌粒径分布、土壌硬度、植生被覆率、傾斜、道幅を計測した。林道における浸透能は平均33.3mm/hと林内(平均:563.1mm/h)や道路脇(平均:154.2mm/h)に比べて低く、かつばらつきも小さかった。放棄された林道は平均で63.9mm/h(SD=10.7)と林道と比べると2倍程度高い値であった。浸透能と植生被覆、道幅や路面傾斜、飽和透水係数、粒径分布には有意な関係がみられなかった。土壌硬度や土壌密度が小さく、空隙率が大きい路面ほど浸透能が有意に高くなる傾向が見られた。放棄林道では植生侵入や有機物層の形成によって空隙量が増加し、浸透能が高くなったと考えられた。林道プロットは谷地形、尾根地形、平衡斜面と地形条件が異なるよう設置し流出量を観測した。路面流出量は尾根地形で最も少なくなっていた。プロット流出から算出した最大浸透能は尾根地形のプロットが一番高く(26mm/h)、谷地形(20.3mm/h)、平行斜面(15mm/h)であり、散水実験による路面の浸透能よりも低い値となった。林道流出を路面由来の地表流と遮断中間流に分けることができた。本研究によって林道路面における浸透能は、同一条件下ではばらつきが少なく、同じような値になることが分かった。また小規模の降雨でも林道からの水流出が起こった。本調査地では切り土法面由来の遮断中間流が全流出量に大きな割合を占めることが分かった。また法面の地形条件は中間遮断流の流出に影響を与えることが示唆された。地形や水文条件等を加味しながら法面由来の遮断中間流について研究を進め、このような流出特性も流域の水流出モデルに組み込むことが可能であることが解明された。
|