研究概要 |
申請者はストレス耐性と細胞膜構造の観点から沖縄産マングローブの脂質分析を行い、塩分負荷によりマングローブのテルペノイド濃度が上昇することを見いだしてきている(Oku et al.2003,J PIant Res)。さらに、テルペノイドの役割解明のための準備として、生合成酵素遺伝子のクローニングを試み、マングローブからテルペノイド生合成遺伝子のクローニングに初めて成功している。本年度は、これらの遺伝子情報をもとにテルペノイド濃度変化と合成酵素遺伝子の発現を追跡するとともに、テルペノイド合成及び組織中における各テルペノイド成分の濃度と塩分濃度との相関について詳細な解析を行った。その結果、塩負荷に伴い根においてはマングローブの種を問わず、テルペノイド生合成酵素遺伝子発現及びテルペノイド濃度が塩分濃度依存的に増加した。しかしながら、葉において、テルペノイド濃度は必ずしも塩分濃度と相関せず、組織によりテルペノイドの生理的役割が異なっていることが示唆された。他方、植物ステロールは根において塩分濃度依存的な変動は示さず、塩分耐性においてテルペノイドが植物ステロールとは異なる役割を演じていることが示された。これらの成果をまとめて現在論文投稿中である。さらに、本年度は膜脂質成分としてのテルペノイドの関与を明らかにするため、人工膜モデルであるリポソームへの取り込みを検討した。テルペノイドは少量ではあるが定量的に植物ステロール同様リポソームに取り込まれ、膜成分として機能する可能性が示された。次年度は、膜の物理的性質ひいては膜透過性に及ぼすテルペノイドの影響をリポソーム膜モデルで詳細に検討する計画である。
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