研究概要 |
マングローブから耐塩性因子をスクリーニングする方法として大腸菌を用いた系が確立されているので、本研究においても、テルペノイド合成遺伝子の大腸菌内での過剰発現によりルペノイド濃度を人為的に増加させ、耐塩性への影響を明らかにすることをまず試みた。マングローブのテルペノイド合成遺伝子としては既に申請者等の研究室においてクローニングされているものを用いた。しかしながら、大腸菌を用いる系では細胞内のテルペノイド濃度を増加させることができず当初想定していた評価ができなかった。微生物を酵母に切り替えてテルペノイド濃度の影響を評価する必要がある。この実験と並行して、メヒルギとオヒルギを用いて、塩分濃度を増減させ、テルペノイド濃度への影響を調べた。メヒルギ及びオヒルギ両者においてテルペノイドは塩分濃度に依存して増減し、テルペノイド合成遺伝子の発現もこれと連動していることが明らかになった。根のテルペノイド濃度と塩分濃度間には塩濃度の増減を通じて相関が認められ、マングローブにおいて塩分がテルペノイド合成の重要な制御因子であることを示唆する結果と考えられた。 テルペノイドに対する抗体作成については、低分子であるテルペノイドそのままでは抗原とならないため、タンパク質と連結したコンジュゲートを作成し抗原とすることが考えられる。,今年度はルペオールをモデルとして、タンパク質と連結するための誘導体化について検討した。まず、ルペオール水酸基のスクシニル化またはリン酸エステル化によりテルペノイド骨格に酸性基を導入し、これをタンパク質との連結の足がかりとすることを試みた。スクシニル化については、試薬の無水コハク酸の反応性の問題で、十分な反応率が得られず、触媒等の反応条件のさらなる検討が必要と判断された。また、リン酸エステル化に関しては、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドを縮合剤としてリン酸を結合することを試みた。この反応は定量的であるが、リン酸基同士の結合などの副反応のため、生成物から目的物の単離が課題として残された。
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