沖縄島嶼域に生育する亜熱帯性有用樹の繁殖様式を形態学的、生理学的手法を用いて研究し、樹木の繁殖特性(開花フェノロジー、送受粉機構、結実機構)を解明する。 沖縄県が林業政策上の有用樹と定めた造林樹種は、針葉樹4種、広葉樹23種の計27種である。このうち、広葉樹23種の中には開花結実、受粉・交配様式など樹木の繁殖特性が未解明である樹種が大半を占めている。そこで、沖縄県の指定造林樹種のうち、これまでに開花結実、結実量、種子散布などの繁殖特性が解明されている針葉樹4種と広葉樹11種の他に、現時点で計画している研究手法では、短期間に研究成果の得られる見込みのない6種を除いた広葉樹6種の開花結実機構を繁殖生態学的に研究し、種子生産のための生殖生態あるいは生殖生理を明らかにする。 本研究では、供試樹種の繁殖特性を解明するため、つぎの調査項目について研究する。 (1)開花に関する調査;開花開始齢と個体サイズの関係、開花フェノロジー調査(花の寿命、花のサイズ、花密度、性表現、先熟性観察、両性花の雌機能、雄機能の重複期間) (2)結実に関する調査;結実開始齢と個体サイズ、花粉形成、受粉・受精、訪花昆虫相(ポリネーター)の検索と訪花行動、受粉操作実験、雌花の生残調査 (3)種子生産に関する調査;成熟時期、結実量、種子稔性調査、散布様式、散布範囲、散布量、散布時期 本研究の遂行によって、供試樹種の繁殖特性が明らかにされる。さらに、沖縄島嶼域の森林保全あるいは再生、新規造成のための地元産種子採取による苗木生産、あるいは天然更新のための種子確保など、種子生産技術の基礎的情報である開花・受粉機構ならびに結実機構の解明は、極めて重要な研究成果といえる。
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