研究概要 |
(1)奈良県春日山照葉樹林に設置された固定調査区において、胸高直径5cm以上のウリハダカエデ全木(180個体)を標識付けし、そのサイズと調査区内の位置を記録した。 (2)2011年4~5月にかけて、双眼鏡を用いて、標識付された個体の花の性と開花量を観察し、各年の性表現を明らかにした。また、9~11月にかけて、樹冠を直接観察して結実量を評価するとともに、そのデータを性判定にも用いた開花個体の性比は雄に偏っていた。また、少数ではあるものの、雄花と雌花の両方をつけた両性個体も確認された。性表現と個体サイズの間に、対応関係は見られなかった。被陰個体,幹折れ・枝折れ等の損傷を持つ個体は,雌として繁殖している傾向があり,個体の健康状態を性表現との対応関係が示唆された. (3)標識付された個体の幹肥大成長量をアルミバンド製バンド型デンドロメーターを用いて測定した。また、個体の状態(幹が折れたり、腐ったりしていないか等)も併せて確認した。調査期間中には、台風などの自然攪乱は起きず、個体の状態の変化は、ほとんど見られなかった。また、成長量の年変動も小さかった。成長量の小さい個体は,雌として繁殖している傾向が見られた. (4)花粉流動を調べるため、10本の母樹から種子を採集した。 (5)標識付された個体の種子からCTAB法によりDNAを抽出した。抽出したDNA溶液からは、精製キットを用いて不純物を取り除いたのち、マイクロサテライト解析により各個体の遺伝子型を決定した。その結果、父性解析が十分可能な多型をもつ遺伝子座が、複数見つかった。
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