平成21年度は3年の研究期間の2年目にあたり、以下の4項目を実施目標にあげて研究を遂行した。 (1)市民が自らの手で維持・管理できる海岸林の造成方法の検討 4月26日(日)に静岡市下島公民館にて「静岡海辺つくりの会」で講演、8月19日(水)に静岡県磐田市にて「遠州灘沿岸保全期成同盟会」で講演、11月21日(土)には静岡県浜松市の「根っこの会」のメンバーと遠州灘における海岸林保全ボランテイア活動地を視察した。これらの活動を通して、市民が自ら継続的に海岸林保全活動を行うための実践方法及びその困難性の情報を得ることができた。 (2)広葉樹の耐風・耐塩・耐潮性試験の実施 クロマツ及びスダジイ、ヒメユズリハ、クスノキ、モチノキ、ヤブニッケイ、タブノキの沿岸部に生育する広葉樹について、霧吹きにて塩分を付着する実験を行った。その結果、クロマツが一番耐性が高く、広葉樹の中ではタブノキ、モチノキの耐性が高く、ヒメユズリハとヤマモモで低かった。この結果は、11月6日-8日に開かれた日本海岸林学会千葉大会で発表した。 (3)既存の広葉樹海岸林の調査 神奈川県湘南海岸ではクロマツと広葉樹の生育比率の違いが土壌中の菌根菌にどのような影響があるのかを調査した。また、遠州灘海岸林では砂丘上の広葉樹海岸林を対象に、斜面位置による種組成や成立する群落の違いを明らかにした。研究の成果は、いずれも11月6日-8日に開かれた日本海岸林学会千葉大会で発表した。 (4)砂丘上の風と飛塩、飛砂現象の把握と海岸林が衰退した場合の被害の発生予察の検討 静岡県遠州灘海岸林のマツ枯れが顕著に見られる人工砂丘を対象に、斜面位置の違いが風向・風速、土壌水分に及ぼす影響を把握するための調査を行った。結果は解析中であるが、斜面方向によって土壌水分に大きな違いがあり、そのことが群落の遷移に大きな影響をおよぼしていると推察された。結果の一部は平成22年4月12日-14日に北京で開かれた国際学会で発表した。
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