平成22年度は3年の研究期間の最終年にあたり、以下の5項目を実施目標にあげて研究を遂行した。 (1)広葉樹の耐風・耐塩・耐潮性試験の実施 沿岸域に自生する広葉樹(スダジイ、ヒメユズリハ、クスノキ、ヤブニッケイ、タブノキ)を対象に、湘南海岸にて現地実験、ビニルハウス内で同様の実験を行い、沿岸環境に対する耐性を把握した。 本現地試験では、クスノキの耐性が低く、マサキはクロマツと同程度の耐性を持つと考えられた。 (2)広葉樹海岸林の景観評価 静岡県遠州灘海岸林を対象として、海岸林の景観状況の把握を行った。その結果、当該地は1921年から2001年の80年の間に海岸林や農地が海側へ前進したために砂浜が大きく消失したこと、海岸林の林相及び土地利用も大きく変化し、7つの景観タイプに分類できることがわかった。 (3)松枯れ後の林床変化と遷移の予想 愛知県田原町西の浜海岸林、佐賀県虹ノ松原、石川県金沢市近傍海岸林を視察して、松枯れ後の海岸林の林床で発生している実生の天然更新と林床状況、広葉樹の侵入状況を把握した。クロマツ実生の大量発生と生存には、上木であるクロマツの一斉枯死と林床のハイゴケ、及び広葉樹の林内への侵入状況などが関与しているのではないかと考えられた。 (4)市民による海岸林再生への取組み可能性の検討 愛知県田原町西の浜海岸林を対象に、市民参加の可能性を検討した。 (5)研究成果の取りまとめと公表 論文1編、学会発表5件、図書1件を公表した。
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