研究概要 |
本年度は主に,巻枯らし間伐木からのキバチ類を中心とした穿孔性昆虫の発生について成果があった。巻枯らし処理3夏目の処理時期による穿孔性昆虫発生状況について調べたところ,主にヒメスギカミキリ,ヒノキノキクイムシ,キイロホソナガクチキムシ,オナガキバチが発生した。ヒメスギカミキリはヒノキの8月処理木から多く発生した。ヒノキノキクイムシの発生は少なく,ヒノキ8月処理木のみからであった。キイロホソナガクチキムシは主に11月および5月処理木で発生したが,発生数は少なかった。このように,ヒメスギカミキリとヒノキノキクイムシは主にヒノキ8月処理木から発生した。これらの昆虫は枯死直後あるいは衰弱木で繁殖する昆虫であり,処理2夏目時点でヒノキ8月処理木の1本が枯死直前の状態であったことと関係しているかもしれない。キバチ類については,ニホンキバチは樹種・処理時期に関わらず全く発生しなかったが,オナガキバチがヒノキ11月処理木から主に発生した。巻き枯らし木からのニホンキバチの発生数は処理時期に関わらず少なく,巻き枯らし木は生育に不適であると考えられる。また,オナガキバチはニホンキバチの共生菌を利用して,主に処理3夏目に発生するものと考えられる。処理3夏目に多く発生した昆虫はヒメスギカミキリ,キイロホソナガクチキムシ,オナガキバチであった。ヒメスギカミキリ,キイロホソナガクチキムシは二次性昆虫であることが知られておりオナガキバチは,材変色を引き起こす共生菌を持っていない。したがって,処理3夏目に深刻な林業被害をもたらす新たな害虫の発生はないと考えられた(川村ら2009)。 その他,全国3カ所で3樹種を伐倒し,そこから発生する各種キバチ成虫を来年度産卵試験に供試する予定である。
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