本年度は主に、巻枯らし間伐木の衰弱過程について成果があった。染料注入により、巻枯らししても、長期間枯死しない個体については、完全には水分通導が遮断されていないことが明らかになった。このことは、巻枯らしの枯死メカニズムとして、「水分通導の遮断による枯死」と「根の衰退による枯死」の両方が存在する可能性を示す証拠となる。この結果は、これまで研究代表者らが示した、木材含水率が短期間に低下する個体と長期間高含水率が維持される個体があることと関連するものと思われ、キバチ類にとってどのような状態の巻枯らし木が繁殖に適しているかを知る上で重要な知見である。これらの成果については、2011年度の森林学会で小集会を企画したいと考えている。 また、キバチ類の発生生態については、新たな実験方法を連携研究者と議論した。すなわち、成熟卵を注射針に通すことにより孵化刺激を与え、それにより孵化した卵を培地上で共生菌を繁殖させたシャーレ上で若齢幼虫まで飼育し、その後菌を接種した丸太で繁殖させるというものである。これが成功すれば、キバチの発生生態の多くが解明されると期待される。来年度は、この研究に重点を置きたいと考えている。
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