今年度は、菌類と共生する穿孔性昆虫について、材の含水率とニホンキバチ共生菌の繁殖との関係、カシノナガキクイムシの総合防除について成果があった。ニホンキバチ共生菌を接種したスギ丸太を、含水率を変化させるため3処理を行い、分離率を比較した。水苔処理では約10~35%の分離率で、対照木の約7~30%よりやや高かった。含水率は水苔処理では、接種2週間後には約110%であったが、その後150%まで上昇した。対照木では接種2ヶ月後まで約90~100%と横ばいであった。水差し処理では接種後1週後には150%以上であり、共生菌は全く分離されなかった。以上のことから、スギ丸太での共生菌繁殖に適した含水率は100~150%の間であることが示唆された。カシノナガキクイムシの総合防除に関しては、ラップ巻き処理木では、コナラ24本中18本が再加害を受けその内9本が枯死した。アベマキでは3本中3本が再加害を受け1本が枯死した。殺菌剤注入木では12本中3本で25%、非注入木では4本中2本で50%と注入により、枯死を半減させることができたが、注入しても一定割合が枯死した。おとり木では31.9±43.3頭が捕獲されたのに対し、対照木では7.0±8.2頭と有意に多くの成虫が捕殺された。また、おとり木では20%カシナガの加害が確認されたが、対照木では加害された個体はなかった。初加害本数は、コナラでは2008年から2009年にかけては増加したが、総合防除を行った2010年ではおとり木への加害を含めても2009年の半数以下に減少した。また、未加害木の加害割合も、コナラでは2008年から2009年にかけて増加したが、2010年では2009年に比べて減少した。初加害木中の枯死木本数は、コナラでは2008年から2009年にかけて約4倍に増加したが、総合防除を行った2010年では2009年の半数以下となった。
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