研究概要 |
本研究では,わが国の森林の6割を占める個人有林に注目し,その将来の担い手像を示すことを目的とする.平成20年度は,特に,道の消失と森林管理の関連に注目した.また,ボランティアの受け入れが地域の森林管理に及ぼす影響について,明らかにした.成果の概要は,下記のとおりである. 1.道の消失が森林管理に及ぼす影響 岡山県英田郡西粟倉村を対象に,5万分の1旧版地形図を用いて,明治後期から現在にかけた4時期について道の増減を調べた.その結果,昭和20年代から60年代にかけた期間に,道の消失が多く,消失道路は残存道路に比べ,有意に標高が高く傾斜がきついことが示された.森林管理に不利な条件の場所に消失道路が多かったことは,昭和40年代に個人分割された山林の育林後期ステージになって影響を及ぼしたことが示唆される.また,個人分割後も,作業道等の設置・管理はかつて入会利用していたグループで行われているが,不在村者の増加やよそ者の参入によりグループ編成が変化してきたことで,管理に支障が出ており,森林管理者による道の管理への関与の仕方の変化が森林管理自体に影響を及ぼしていることが示唆された. 2.森林ボランティアの活動が地元林家の森林管理に及ぼす影響 森林ボランティアを受け入れることによって,地元林家が森林管理意欲を回復する可能性について,2000年世界農林業センサスデータを用いて検証した.その結果,森林ボランティアが活動している自治体のほうが,活動していない自治体に比べて管理に従事する林家数が多い傾向がみられた.ただし,間伐ボランティアに関しては,活動面積が広いほど森林管理を行う林家数は少なくなる傾向がみられる一方,参加人数が多いと管理を行う林家数が多くなる傾向がみられた.これは,間伐ボランティアが少人数で広い面積を間伐するといった森林管理に特化した活動をすることよりむしろ,森林管理を行うだけでなく各種の交流を地元住民と行うことが,林家の森林管理意欲をうながす効果があることを示唆している.
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