研究概要 |
本研究では,わが国の森林の6割を占める私有林に注目し,その管理の担い手像を示すことを目的とする.平成21年度は,研究対象地を新たに設定し,林野率の高い山村の状態分析,および土地利用変化の分析をおこなった.成果の概要は,下記のとおりである. 1.山村の状態分析 宮崎県の旧市町村(H17年時)を対象に,昭和35年-平成17年の人口増減率をもとに増加,減少(減少率60%未満),激減(減少率60%以上)の3グループに分類し,人口規模,森林特性を比較した.激減グループは1町7村であり,すべて現在の人口が1万人未満,林野率90%以上の山村であった.また,同グループの人口構成は65歳以上が4割近くと,増加・減少グループに比べて有意に高く,社会的共同生活を維持する担い手の再生産機能が低下していることが示唆された.森林および林業従事者に関しては,激減グループが他のグループに比べ,林家率が高く,保有山林規模が大きく,人工林の樹齢構成が若いことが示された. 2.土地利用変化における人工造林の位置付け まず,人口激減グループの一つである日之影町を対象に,4期(M41,S29,S46,H2)の旧版地形図を用いて明治期から平成期にかけての土地利用変化を明らかにした.森林率は,明治後期よりほぼ90%であるが,昭和46年時で76%と減少し,平成初期には91%に回復した.変化の内容は,昭和46年時には昭和28年時の森林の19%が荒地化し,昭和46年時の荒地の84%が平成2年時に森林化したものであり,83%が同じ場所での変化であった.森林化した場所の林相は,9割が広葉樹林であり,針葉樹は1割程度であった.資料等によると,昭和46年時の荒地の増加は戦時中の開墾や焼畑によるものであり,その跡地の森林化において針葉樹林率が低かったのは,用水路開削と開田に労力がとられ,全国に比べると人工林化が遅れたためと推察された.
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