研究概要 |
カブトムシの幼虫が森林土壌中で森林の物質循環に及ぼす影響を評価するために、腸内微生物叢の解析が重要である。本年度はカブトムシ幼虫のライフサイクルと飼料組成による腸内細菌叢の変遷を追跡調査した。 第1段階として腐葉土を飼料とし、同一飼育環境で、初齢幼虫から2齢、3齢幼虫と生長するに従い変化する腸内細菌叢を、飼育環境である腐葉土及び、糞中の細菌叢と併せてPCR-DGGE法で解析した結果、カブトムシ幼虫の腸内細菌叢は、初齢でも腐葉土とは異なり、2齢の段階で3齢とほぼ同じになることが明らかになった。 第2段階として3齢幼虫を使用し、飼料組成を変化させた場合の腸内細菌叢の変化をT-RFLP法で解析した。飼料は、腐葉土だけを餌としてカブトムシ幼虫を飼育した飼育箱中の残渣を篩で分け基材とし使用した。この基材に、セルロース(β-1,4-グルカン)、カードラン(β-1,3-グルカン)、バーチウッドキシラン(β-1,4-キシラン)、ヒラミルマンナン(β-1,4-マンナン)の粉末をそれぞれ別に5%添加した粉末飼料を調製した。さらに基材と腐葉土を対照として用意し、36日間個別に飼育した。飼育期間終了後、幼虫を解剖して中腸と後腸の内容物から総DNAを抽出後、16S rDNAをT-RFLP用蛍光プライマーを用いてPCR増幅し、制限酵素BslIで消化後、その断片のプロファイルを解析した。得られたT-RFLPプロファイルは、ヒト腸内フローラデーターベースを用いて解析し、含まれる細菌の分類群を推定した。飼育30日目に幼虫の体重は、腐葉土とカードラン、バーチウッドキシランでは維持されたが、その他の条件では著しく減少した。このことは、カブトムシ幼虫腸内の多糖類分解酵素の組成を反映していると考えられ、これまで得られた結果と一致していた。また。各飼料で飼育した幼虫の腸内細菌叢をT-RFLPで解析した結果、カードランとバーチウッドキシラン飼料の腸内細菌叢は中腸、後腸とも腐葉土と類似していた。
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